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〜 『 ・・・・・僕は飲酒をやりませんからお母さん。読書&女です。
』 〜
● ストーリー
・ 早くから文学の道を志す良家の長男として生まれ育った荷風(津川雅彦)。荷風文学の真髄は女性を描く事。その為に遊蕩生活に明け暮れる毎日。そんな荷風を心配し、いさめる母(杉村春子)であったが、そんな母も亡くなり、合いも変わらず以前会った女の面影を忘れられず、玉の井付近を散策するが、急に大粒の雨が降り、浴衣姿の女が荷風の傘に入ってきた。女は遊女のお雪(墨田ユキ)といい、荷風はお雪に誘われるまま、部屋に上がる。
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● 解説&見所
『 おひとりさま 』 の元祖、永井荷風の自伝的小説を映画化した異端の文豪の半生&日々をおもしろおかしく、それでいて少し物悲しく描いた秀作です。
昭和初期ののんびりとした時代背景から戦争時の危うい時代背景も折込み、前半は中年の荷風の日常を、女性にまつわるトラブルも含めおもしろおかしく、後半は60代にひょんなことから知り合った遊女「お雪」との交情を坦々と、又、自分の年齢を考え、結婚に踏み切れない荷風と、その為に取り返しのつかない結果を招く荷風自身を、新藤兼人監督は、心象風景とともにリアルに描ききっています。
永井荷風には津川雅彦がスマ−トかつコミカルに、40代〜70代の晩年までを演じています。
特筆すべきは竹久夢二の美人画に出てくるような、日本的な雰囲気がはまり役のヒロイン、献身的で人なつこく、それでいてあっけらかんとした設定のお雪役の墨田ユキの存在です。
今作ではまさにその時代をほうふつとさせる<存在したであろう情のある、懐かしい遊女>を好演。
R-15指定らしく性描写やヌードも出てきますが、ちっともいやらしくなく美しく明るく描かれたイメ−ジが似合う、素晴らしい女優です。
又、荷風が玉の井付近をさまよって探した遊女に、AV女優から転身した八神康子なども出演。こちらは正反対のしっとりとした艶っぽい演技など、当時を席巻した女優らしく華を添えています。
雪の献身的な態度と哀願で、荷風は遂に結婚しようと約束までするが、年の差に迷ったあげく、身請けの当日、荷風は二の足を踏み訪れるのをやめてしまいます。
一方、雪は荷風を信じ身請けに来るのを待ち続ける。
身支度を整え、来ない荷風を待つその姿が凛として潔く、それゆえにとても切ないです。
そうはいっても雪の事が気になっていた荷風は「今一度」と言い放ち、雪に合おうと着替え始めたその時、なんと東京大空襲が始まり、永井荷風の自宅・変奇館ともども家財一切を失ってしまいます。
遊女屋も焼け出され、雪も行方知れずに。
焦土と化した東京を、ポツンと一人眺めてたたずむ荷風がなんとも哀れで郷愁を誘います。
荷風の晩年、浅草で雪は荷風とすれ違います。トレドマークの傘に気づく雪。しかしあまりの老け込みように義理の母に人違いと言われて納得し、荷風が賞をもらい顔写真が新聞に載っても義理の母の「違うだろ〜」の一言で納得する始末。
こうしてラストは荷風のたった一人の老後の日常がわびしく物悲しく描かれます。家では貧しく一人で食事の用意をし、曲がった腰で表に外食に行けば足がおぼつかなく店で転倒する荷風。
ラストは実際に永井荷風の死因にちなんだ結末となっています。
最後はなかなか壮絶で、借家で吐血し孤独死している荷風に群がり、物の様に写真を撮り始める新聞記者たちのシーンが一層、物悲しさを強調しています。
母親に「僕は一人で死んでいきます。」と言った手前、当然の帰結でしょうか?
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『 おひとりさま 』 が本当に一人になった時どうなるのか?
「おもろうて、やがて悲しき人生かな」
そんな名言が浮かんできそうな感慨深い日本文学的なラストに仕上がっています。
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全てが懐かしい昭和初期の古き良き日本の風情や風習に原風景、遊女屋や庶民の生活をモチーフにして、一人の文学者の生き様を描いた傑作です。
★ 是非ご鑑賞ください。名作です。★
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- ・公開年 : 1992年
- ・制作国 : 日本
- ・上映時間 : 分
- ・仕 様 : カラー
★★★★★
★★★★★
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★★★★★ ★
・名作度
・ストーリー
・キャラクター
・コミカル度
・遊女度
・ハッピ−エンド
・購入してゆっくり楽しむ。
・簡単レンタルで楽しむ。
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墨東綺譚
ぼく とう き だん
潤